国際女性デーに寄せて

本日、3月8日の国際女性デー(International Women’s Day)に合わせて、2021シーズンに臨む大和シルフィード・トップチームのシーズンポスターを発表させて頂きました。
https://www.yamato-sylphid.com/news/210308-2/ (2021シーズンポスター完成のお知らせ)

メインコピーは、「闘い続ける。挑み続ける。」です。
これはもちろん、コロナ禍において日々発生する多くの苦難を全員で乗り越えようとする選手・スタッフたちの決意の代弁であり、初めて戦うなでしこリーグ1部の舞台の中で常に表現すべきマインドであり、そしてシーズンを通じてクラブに関わる全ての人と一緒に貫き切りたい姿勢を表しています。
一方で、現代において、顕在化していること、潜在的なことに限らず、ジェンダー平等に関わる多くの社会問題が散見される中で、大和シルフィードが女子サッカークラブとして、スポーツを通じて社会に届けたいメッセージそのものでもあります。

大和シルフィードのクラブ創設は1998年ですが、その時中心にいた方の多くは、古くは1970年代後半からこの地で女子サッカーの普及に努めてこられました。まだJリーグも誕生していなかった時代です。サッカーの認知度も決して高くない中で、まして女子サッカーとなれば、多くの偏見や心ない視線が存在していたであろうことは想像に難しくありません。それでも、目の前にいる、ただサッカーを楽しみたい、サッカーを続けたいと願う女の子たちに寄り添い続けた想いの先に、大和シルフィードが創られたのです。

それから二十数年の時間が経つ中で、Jリーグが誕生し、なでしこジャパンが世界一に輝いてもなお、未だに日本における女子サッカーの競技人口は、中学校に進学する13歳のタイミングで全体の約22%(※1)の選手たちが競技を続けることなくサッカーから離れていきます。また、女性のスポーツ実施率は男性に比べ低いと言われており、中学2年生の女性に関してはその約20%が「スポーツが嫌い」「やや嫌い」と答えるのが現状です(※2)。競技を継続しても、多くの心身に関する困難が存在します。競技内容は様々ですが、国立スポーツ科学センターの行った調査によると(能勢ら,2014)、無月経や月経不順など全体の約40%の女性アスリートが月経周期の異常を経験しており、より一層の専門的なサポート体制の構築や、指導者の知識向上等が求められています。心理面でも、昨年11月に日本オリンピック委員会をはじめとする7団体の連名で、「アスリートへの盗撮による性的ハラスメントの防止に関するステートメント」が発表されたことも記憶に新しいところであり、性的ハラスメントを含むあらゆるハラスメントの防止に向けて毅然とした対応や連携が、今まさにスポーツの現場に必要なことであると認識しています。

大和シルフィードは昨年、クラブの運営母体を株式会社化し、今秋開幕する日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」への参入にチャレンジをしました。結果は残念ながら初年度の参入は叶いませんでしたが、その背景には、クラブがプロ化することを通じて、上記のような社会課題の解決に貢献したい、社会連携を推進したいという想いと覚悟があります。WEリーグ参入は目的ではなく手段であり、最も大切なことは、多くの女性アスリートがより一層、心身の安心・安全が確保された上で、多様性への理解、配慮がされた上で、競技に専念できる環境を創ること、10代女性のスポーツ実施率向上、スポーツ指導者のリテラシー向上に貢献すること、そして例えばパートナー企業や地域で働く女性のヘルスケアに、スポーツ現場の知見を取り入れることでパフォーマンス改善や健康経営推進に寄与すること。こうしたひとつひとつのアクションを積み重ね、将来、女性があらゆるライフステージにおいて健康的に活躍できる社会を実現することです。
選考落選の大きな理由である「ホームスタジアムがプロ基準を満たしていない」という点も、「経営基盤の弱さ」も、すぐに打破することの難しい極めて大きなハードルに思えます。しかし、そもそも大和シルフィードは、そうした大きなハードルを乗り越え続けてきた歴史を持っていて、他のどんなクラブよりも、ずっと地域でWomen Empowermentを続けてきたからこそ、ここで諦めることなく、挑み続けたいと考えています。
今日の国際女性デーが、長い時間をかけてジェンダー平等の実現や、女性の権利を守ることにつながってきたように、大和シルフィードも、これまでも、これからも、闘い続け、挑み続けます。そしてホームタウンや現在のパートナー、これから新たにパートナーとなって頂ける企業の皆様とも手を取り合い、SDGs社会的インパクトの創出を目指して参ります。

大和シルフィード株式会社
代表取締役社長
大多和 亮介

※1 日本サッカー協会, 競技者登録データ, 2018
※2 スポーツ庁, 女性スポーツの促進方策, 2018